意外と見所のあった総裁選
自民党総裁選が終わり、安倍首相の3選が決定した。
この選挙は当初から安倍首相の3戦はありき、石破氏がどこまで票を伸ばすことができるかで、次期総裁として生き残りが出来るか否かが問われる、というなんとも普通の感覚からすると不思議な選挙だった。
終わってみれば倍以上の差をつけて安倍首相の圧勝。
しかしながら、思いもよらない石破氏の善戦に、負けた石破氏が笑顔で圧勝した安倍首相陣営が戸惑う、という不思議な構図に。
当初予想された石破氏に入る国会議員票の予想は50票程度と見られていたが、73票を獲得。
党員票でも44.7%を獲得し、存在感を示した。
ここに注目された男が一人いる。
小泉進次郎である。
彼は総裁選の攻防を静観し、どちらに投票するか態度を明らかにしないまま当日を迎えた。
6年前の総裁選では小泉進次郎氏は石破氏に投票している。
しかしながら、今回は安倍首相が圧倒的な勝ち馬。
今後の身の振り方を考えると、石破氏側に回れば党内で冷遇されるのは目に見えている。
かと言ってただ単に安倍首相支持に回れば、その変心に対して確かな理由がなければ民心は離れる。
なんだ、小泉進次郎もただの政治家か、と。
故に小泉進次郎氏はただただ沈黙を貫いた。
世間が騒ごうが何しようが自分の意思を伝えることはしなかった。
当日、小泉進次郎氏は投票直前に石破氏に投票すると宣言。
私は当初安倍陣営支持に回ったとの記事を読んでいただけに驚いた。
しかし、紛れもなく小泉進次郎氏は石破氏に投票を公言し、理由をこう語っている。
「日本のこれからの発展は人と違うということを強みに変えられるか、そういったことが大事。自民党も違う意見を押さえつけるのではなくて、違う声を強みに変えていかなければならないという思いから判断した」
安倍陣営を牽制するようにも聞こえるこの踏み込んだコメントは、向こう側の国民感覚に近いと感じざるを得ない。
また、国民側を意識しての行動とコメントだろう。
小泉氏は最初から決めていた、と語っていたが、実際には相当に悩んだと思う。
実際こんなコメントを残している。
「いろんな情報戦があった。総裁選というのは政治の世界での戦、私は武器を持たない戦争だと思っている。その過程の中で日々変わるもの」とし、「自分が生き抜いていけるのか、非常に学びのある総裁選だった」
このコメントから、安倍陣営側から小泉氏にさまざまなアクションがあった事は想像に難くない。
また、「安倍さんか石破さんかという二者択一に見えて、そんな単純な話ではなかった」
とも語っている。
いわば、小泉氏にとって石破氏というより、安倍氏の反対側に回ることが重要だったのではないだろうか。
そうすることで自民党を変えたいという思いが感じられるコメントも残している。
“3選”の安倍総理に望むこととして、「『新しい国づくりをしたい』というあいさつにあったように、人と同じではなくて違うことが強みになるんだという社会をつくっていただきたいし、『ノーサイド』という言葉にあったとおり“真のノーサイド”という形で1歩前に進めていきたい。日本でノーサイドとか一致団結というと、何も言わない、意見を言わないことだと勘違いされるが、意見をぶつけ合って最後決まったことは『それでいこう』というのが本来の自民党のノーサイドだと思う。そうなっていくことを期待しているし、安倍総理には最後の総裁任期を、腹の底からやりたいことを完全燃焼していただきたい。党内で違う声があってもそれを強みに変えていただきたい」と述べた。
ノーサイドと言いながら、実際には石破氏に回った人間を冷遇するであろう人事に牽制をした形。
これは安倍一強と言われ、独裁的に国民から見られる事に対してこうしなければ国民の支持は得られないぞという小泉氏の本心だろう。
このコメントを小泉氏が出した事で安倍陣営は苛立つ事だろう。
これで石破陣営を人事の上で冷遇するようものなら、ノーサイドとはなんだったのかとピックアップされかねないからである。
そうなる事を見据えて、安倍首相は当然支えてくれた方々を大事にしたいと思うとのコメントを残している。
この点、人事が冷遇と言われるであろう事を想定して、あくまで支えてくれた方々に報いたいんだという形で目線をずらそうとする思惑が見て取れる。
さすが、海千山千の総理である。
今後は石破氏、小泉氏の人事での処遇が焦点にされている。
実際には、派閥均衡型の人事になるのでは、との予想が立っているが、この2人を要職に就ける事が安倍首相の懐、また、自民党が変わったと印象付ける何よりの策ではないだろうか。
実際問題、そんな綺麗事で自民党の政治はできないのだろうが、安倍首相の英断に期待したい。